DESIGN

Airbnbのリブランディングにみる数値ではなく理念を重視するデザイン

  

DesignStudioというエージェンシーの仕業

2014年秋に、自分の住宅の空きスペースを貸し出すAirbnbがそのほぼ全てをリデザインしました。Airbnbのみで行ったものではなく、イギリスのデザインエージェンシーDesign Studioの協力のもと行いました。
Design Studioのサイトに載っているその内容を、主にプロダクト(web/App)を中心に紹介していきます。

  

テクノロジーブランドからライフスタイルブランドへ

Airbnbがリブランディングを行った目的は「テクノロジーブランドからライフスタイルブランドへ変化する」ためでした。ただ、世界中の家に泊まれるサービスではなく、サービスの体験を通して世界中に家がある、世界中が自分の居場所であることを実感できるものへと進化させる目的です。
(おそらく次の成長フェーズを考えてより一般層に向けてサービスを見直す必要があったのでしょう)

その目的のもとロゴアイデンティティ、プロダクト、Airbnbのほぼ全てのデザインを変更しました。以下はBeloと言われる新しいロゴです。「人、場所、愛、Airbnb」の意味があります。

logo
  

デザインのプロセス

Design Studioは外部の会社としてAirbnbと関わりましたが、担当したチームはAirbnb社の中に席を置き、ほぼAirbnb社の一員として仕事を行ったそうです。そうすることで、意思決定者を知り、利害関係をしることができ円滑に仕事を進めることができたと語っています。

また、ブランディングの肝でもあるその会社やサービスのカルチャーを知るために、実際にDesignStudioのメンバーはAirbnbを利用し世界各国のホストと会うことを行いました。
その様子は全員カメラで共有することで、それぞれの体験をリアルに共有し、サービスの価値観をデザインプロセスに関わるスタッフ全員で学びました。

  

デジタルを生活に近づけるプロダクトデザイン

DesignStudioがAirbnbの事例の中で以下のように語っています。

「グローバルに人と関わり、成功しているブロダクトであったが、Airbnbはテクノロジーを中心にしていた。生活を中心に捉え直す必要があった」

ただ機能としてウェビサービスを提供するのではなく、サービスを通して目指したい世界観に近づけるために、ユーザーだけでなく組織の考えも統一していくためにも、リブランディングを行う必要がありました。
その考えがプロダクトにどう落ちているのか見ていきます。

1:変更された Webサイトトップのアイキャッチ

以前は機能的なメッセージ「Find a place to stay : 宿泊場所を探そう」でしたが、今は「Welcom to Home : おかえりなさい」というメッセージに変更しています。 自分が普段住んでいる国だけが自分の居場所ではなく、世界中どこにでも自分の居場所になるんだよ。というメッセージをコピーで表しています。
アイキャッチの背景もAirbnbゲストとホストの生活の様子を映すことで目指すイメージを伝えています。

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2:サービスの体験にフォーカスしたアプリのログイン画面

つづいて、アプリの玄関である「ログイン画面」を見ていきます。伝えたいコンテンツ自体は以前と変わりませんが、伝え方がガラッと変わっています。 以前は機能的で、何をすればいいのかを順番に説明するような表現方法をとっています。写真もぼかしていて雰囲気を演出するだけにとどめています。
変更後はキャッチコピーを意味を含んだものにし、写真を大きく使い「サービスを使うことでどんな体験ができるのか」を想起させるストーリーテリングな内容に変更しています。

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book


3:人の顔の見えるコンテンツリスト

ブッキングする部屋をリストで表示している画面です。
もっとも違う点は「ホストの顔アイコンを表示したこと」。世界の人とつながるというコンセプトのもと、ただ部屋を選ぶだけではなく、そこに住んでいる人も体験の1部分として捉え直した結果が現れています。

contentlist


4:ブランドを訴求するメニュー画面

背景のテクスチャにロゴを敷き詰めることでアイデンティティの訴求を行っています。 (個人的にはちょっと印象が強くやりすぎた感はありました。)
ちなみに、現在はユーザビリティの面からこのメニューは廃止され、ツールバーがナビゲーションを担うUIに変更されています。

menu


5:クールなキーカラーから、温度のあるキーカラーへ

以前のカラーは、FacebookやInstagramなどITベンチャーが流行った当時クールだった「ブルー」をカラーに採用していました。
変更後は「レッド」をキーカラーに変更。また、サブカラーとして複数の色も定めています。 「レッド」をキーカラーにしたのはロゴの意味にも込められている「LOVE 愛」や「つながり」など、人の温度のある世界観を目指す上で効果的な色だという考えで採用されていると考えられます。
また、複数の色のサブカラーを設定したのは「言語や国境の壁を越えたコミュニティ」を表現するために必要だったのではと考えられます。

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6:グローバルコミュニティを体感するコンテンツ作成

プロダクトではなくコンテンツデザインの領域になってしまうのですが、Airbnbを利用したストーリーを届ける仕組みもこれを機に作成したようです。
ハッシュタグを使って自分の体験をtwitterやInstagramで共有したり、Airbnbのロゴをアレンジして自分だけのストーリーが作れるコンテンツなど作成しています。 ユーザー参加型でブランドを届ける仕組みを作っています。

airbnbcontent
  

Airbnbリブランディングの中心はサービスの哲学・文化を作るためのデザイン

最近重要視されているサービスデザインの話をすると、プロトタイピング・ユーザー理解を通して、問題を解決するための機能や設計を考えることに話がフォーカスしている印象が個人的にあります。それ自体、世の中に必要されるプロダクトを作るために有効なプロセスです。 ただ機能するものばかりにフォーカスし過ぎると、数字につながらないデザインは無視されがちです。 少し話題に上がったbtraxさんの「数字として結果に繋がらないデザインに価値はないのか?」の中では

「大切なことは、時に数字、またはデザイン性のどちらを犠牲にしなければいけないことを理解しつつ、自分のゴールを達成するためにデザイン性とデータのバランスを正しくとりながら、デザインを実行していくことなのではないだろうか。」

と閉めています。

サービスの現場に身を置くと数字だけにフォーカスされ組織が動いている印象が時にありますが、自分たちのサービスが「どういう存在であるべきか / どういう体験を提供するのか」ということも定め、目標としていくべきなのではと思いました。

KPIなどの数字ではなく、「サービスがどうあるべきか」もセットすることで、数字とデザイン性のバランスが取れるようになり結果として目指すべき価値を提供できるようになるのではないでしょうか。 スターバックスとドトールコーヒーは、同じ「売上」を目標にしている部分もあるはずですが、「どういうお店であるべきか」という哲学部分が違うからこそ、まったく違うお店になっているはずです。

おわりに

サービスデザインの勉強をする中で、どちらかというと機能を追う側面が強い情報ばかりを入れていたのですが、今回の話を知ることで違う視点を持てた気がします。

DesignStudioという会社がもともと企業のブランディングを中心にやっていることもあり、話の内容がユーザビリティより、ブランドをどう表現しプロダクトに落とすかというビジュアルやコミュニケーションの話に寄っていますが、これもサービスデザインの話の範疇に入るのではと思います。
あまりサービスデザインでこの類の話は聞かないので新鮮でした。

また、この話から、ジョナサンアイブが初代iMacをデザインした話を思い出しました。
それまでギークのためであったパソコンを一般ユーザーに近づけるため、ポップなカラー展開をプロダクトに採用したという話です。Airbnbも、ビジネスのフェーズが、アーリーアダプタからマジョリティに移すべきタイミングでもあると推測でき、似た状況だったのかもしれません。

ブランディングというと、プロダクトそのものではなく、伝える方のみを工夫するケースが多い印象があります。しかし、そもそもプロダクトそれ自体に価値があってこそ、PRなどの手法も効くことを考えると、サービスデザインの考える上でブランディングやコミュニケーション設計の知識も大変重要だと思いました。

個人的には価値の本質に近い部分に関わり、それをうまく伝えていく手法まで設計する仕事がしたいなと思っています。 そんな自分にとって良い事例を知ることができました。

参考
Design Studio | Airbnb
Inspired UI | Airbnb

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TAKUMI KAI

タクミ カイ

90年生まれ。九州宮崎出身のデザイナー。
良い感情を作るために体験をデザインします。

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